私とディープインパクトの小さな思い出

先週の2023年7月30日で、日本競馬の最高結晶であるディープインパクトが亡くなって4年が経ちました。今年はラストクロップのオーギュストロダンイギリスダービーを制するなど、亡くなってもなおディープインパクトの伝説は続いており、これからも日本だけでなく世界でも彼の偉大な血が続いていくことでしょう。今回は私とディープインパクトの思い出を2006年の凱旋門賞の写真を交えて思い出に残したいと思います。

 

初めてのレース生観戦 2005年有馬記念

この年の有馬記念ディープインパクトが出走することから当日券の販売は一才なく、ウインズや競馬場での前売券販売のみでした。そしてその前売券を購入するために、週末になると各地のウインズや競馬場にファンが長蛇の列を作る、という現象が発生していたようです。そんなニュースを見ながら、有馬記念を現地観戦するなんて無理だろうと思っていたところ、競馬仲間の先輩から渋谷ウインズで前売券を購入したとの連絡が。しかも特に並ぶこともなく。思ってもいなかった事に驚くと同時に初めてディープインパクトが走る姿を見られる事に喜んだことを覚えています。

そして有馬記念当日、12月25日のクリスマスに競馬仲間の男4人で日も昇らぬ前から車で中山競馬場に向かいました。開門前から行列に並び、朝からずっと、年末の極寒の中山競馬場のスタンドで有馬記念の発走を楽しみにしながら待ちました。どんなすごい走りを見せてくれるのだろう、と負けることなど微塵も思っていなかったので、ハーツクライに届かず2着に敗れた時は状況がよく分からず、ポカーンとすることしかできませんでした。

 

現地観戦2回目 2006年凱旋門賞

有馬記念ではまさかの2着に敗れたものの、その後は天皇賞宝塚記念とGIを2連勝し、いよいよ凱旋門賞挑戦となりました。私もこの2006年夏からフランスへの渡航が決まり、ディープインパクトのレース観戦2回目は海を渡ってフランスロンシャン競馬場になりました。

私にとってはこれが海外GI初参戦。もちろん初めてのロンシャン競馬場。それがディープインパクトの走る凱旋門賞ということで、レースの何ヶ月も前からワクワクしていたことを思い出します。

2006年凱旋門賞 ロンシャン競馬場も改修前です。

当時は初めての凱旋門賞観戦だったのでよく分かりませんでしたが、今思えば、あの時は少し異様でした。「ここは大井か」と思うくらい競馬場に向かうシャトルバスに多くの日本人が。日本語で書かれたマークシート(のような馬券注文書)、日本語での案内や看板など・・。昨年2022年も日本馬が多く出走し、日本人のファンも多くロンシャン競馬場に駆けつけましたが、やはりディープインパクト効果は別次元でした。今はレーシングプログラムは一冊5€と有料販売になっていますが、当時はまだ無料で、私が到着した時には一冊も残っていませんでした。

スタンドもすごい人でした。

いよいよレース。今まで幾多の日本馬が弾き返されてきたとはいえ、ディープインパクトならやってくれるだろう。日本馬には不向きなロンシャン競馬場も彼なら、とこの日も勝つことを信じていました。

ディープインパクト本馬場入場

最後の直線。外に出し、さぁこれから「飛ぶ」かと思いましたが、いつものような加速がなく伸びあぐねている様子がビジョンの映像に映し出されました。レイルリンクに、そして最後はプライドにも交わされ3着でゴール。この日記を書くに当たり、レースを見ながら撮影していた当日の動画を見返したのですが、自分の「頑張れ!!」と連呼する声がゴールと共に絶望とも思える絶叫に変わっていました。それだけショックだったんでしょう・・・

レースを終え、引き上げるディープインパクト武豊騎手。

帰国後はこの鬱憤を晴らすべく、ジャパンカップ有馬記念を圧倒的な強さで勝ち、その力が別次元であることを改めて証明しました。近代日本競馬最高結晶と称され、競馬ファン以外でも誰もが知る名馬ディープインパクト。通算成績14戦12勝2敗とほぼパーフェクトに近い成績で引退をしました。

そうです。私、ディープインパクトが飛んだ姿を生で見たことがないんです。ディープインパクトが敗戦した2つのレースが私が生でディープインパクトの走りを見たレースです。当時、その姿を一目見ようと、出走するレースの度にものすごい数の観客が競馬場に来ていました。当時の競馬ファンの方であれば、一度はディープインパクトが飛ぶ姿をどこかの競馬場で現地観戦した、という人も多いのではないでしょうか。それに比べたら、私のように一度も飛ぶ姿が見られなかったというのはものすごく少数派の気がします。

 

引退後、社台スタリオンステーションにて

ディープインパクト種牡馬生活を送っている時、北海道の社台スタリオンステーションに一度だけ見学に行きました。当時一口馬主をしていたので、ダイワメジャーキングカメハメハドリームジャーニーなど名馬たちをとても近くで見学させていただきました。でもこの時もディープインパクトはすでに放牧地に行ってしまったということで、近くで会うことはできず・・見学の後、一般公開ゾーンからフェンス越しに見学しました。

前売券を買って朝から極寒の中山スタンドで待った有馬記念渡航してまだフランス生活にも慣れない中頑張って電車でパリまで行った凱旋門賞。どちらもファンからしたらなかなかハードルが高いレースだったのではないか、と自分では思っています。

ディープさーん、あなたのレースを見に中山とロンシャンに行ったんだよー

と声をかけても、そんな一ファンのことはお構いなしに草を美味しそうに食べ続けるディープインパクト。最後の最後まで片思いのままで終わってしまいました。

放牧地で自由に草を食べるディープインパクト

私とディープインパクトの思い出は甘酸っぱい失恋のようなものです。憧れの子に何度もアプローチするも相手にすらしてもらえなかった一方的な片思い。でも、たとえ片思いでも、彼の走りに興奮したり落胆したりした思い出は、私の青春の1ページ(競馬編)にしっかりと残っています。それに、片思いのまま終わった方が、ちょっと美化されていい思い出として残っている方が多くないですか?

これからずっと、ディープインパクトの名前を世界中の競馬新聞や血統表で見る度に、ディープインパクトとの出来事を思い出す事になるでしょう。それが片思いの私にくれた彼からのプレゼントであるならば、こんなに素敵な事はありません。ありがとうディープインパクト